出町柳から百万遍へと抜ける事の出来る柳通り。何気に閑静で、緑も多く、自然に溢れているその道には、京大生や生活圏の方々の行き来が見受けられ、和やかな雰囲気が広がっていて風情もある。
昔ながらのお店もあって、ある意味以前から新旧が入り交じる活気のある町だなぁと抱いていれば、独特で特有な文化も相まっていて、実に個性的な地域だと感じられる部分もあるほどバラエティー豊かなカラーも兼ね揃えている。
そんな場所で約75年、『ゆにおん』という看板を守り続けている一人の女性喫茶店主がいる。
何を隠そう令和元年まで、当組合の専務理事も務められていた伊東 愛子さんは祖父の時代から続くその店を、今も和やかでアットホームながらも、きめ細やかな目を輝かせてカウンターに立つ。
当組合新聞の制作でも、娘さんの協力を得ながら、コラム記事が連載されていたほどに関係は深く恩恵も大きい。
「学生さんも多く来てくれはるけどなぁ、古くさいとか懐かしいとか、そう思われてるかもしれんけど、家庭的でいたいねん。」
そんな伊東さんの接客は、常連になればなるほど、安心感や居心地を感じるほどに、味の好みを把握してくれたり、コーヒーをあっさりめにしたり濃いめにしたりと、時間帯や状況に応じて、見えない気配りの中で、お客さんが自然と自分好みの時間を過ごせるようにと腕を振る舞う。
「綿みたいと言うかなぁ、大きなお世話思われるかもしれんけど、何かしてあげたいっていう気持ちが、関係を築いていくと思うんやぁ。」
多くのお店が、機械化やシステム化を進める中で、私達が感じる飲食店での違和感とは、もしかしたらこういう事なのかもしれない。
そう、人を介しているからこそ、そして人の手で作られているからこそ感じる 「ぬくもり」の部分が、どこか人の心を開き「旨い」ではなく「美味い」の感性を刺激しているのかもしれない。
また、そういった気持ちが見受けられるからこそ、受け止める側も感情を抱き、間柄を築きたいと思う姿勢が、自然と「お店とお客」の豊かな関係性を生んでいるのだという事も実感したように思う。
高級とか、完璧とかでははいかもしれないけど、身近に感じれるからこそ、何度も足を向けてしまう原点が、この店には詰まっているように思う。
朝の光を大きな窓から浴びながら伊東さんとお話しをしていると、すっかり昼前へとさしかかっていた。
さぁ、そろそろと腰を上げようとした時、お店の電話がなる。
「あら先生、ほなら今日はハンバーグにしときましょかぁ。やらかめに焼いたら食べはりまっしゃろぉ」
・・・微笑み。
いつまでも母親のような存在というのは最強である。そんな気持ちと優しさを抱きながら、お店を後にする帰り道。
今日もどこかのあの人が、『ゆにおん』に足を運び、第二の家として時間を過ごしているんだろうなぁという光景が頭を離れなかった。
またお邪魔しよ♪
編集部 奥野 薫平
番外編『ユニオン』の謎。
京都市内には現在、ユニオンという名の喫茶店が3店舗存在する。
「喫茶 ゆにおん」
京都市左京区田中大堰町92
「ユニオン 珈琲店」
京都市中京区榎木町69−1
「COFFEE ユニオン」
京都市中京区室町通二条下ル
蛸薬師町283