薫風 vol.7

─24h─

「今日出来る事は明日へ延ばすな」
「今日出来る事は明日にでも出来る」

そんな言葉がある中で、あなたはどちらの感覚の持ち主でしょうか?

勿論どちらかでないといけない訳ではなく、何事にもバランスを取って、その時の自分に向き合える事が何よりも重要かとは思うのですが、私はどちらかと言うと前者の考えの持ち主です。
さらには何処かしら無理をしてしまうクセがあり、持ち越す事があるならばやりきりたい。その時間を費やす時は、1日は24時間あるのだからと睡眠時間を削ってでも作業含め、自分の心や頭の中を整理しクリアにしておきたいと思ってしまう性格です。
それでもそれは少し昔の話し、今は年齢や立場的なものも加わり、自分自身に課すことも無理をしすぎてはいけないという経験値は持ち合わせてきましたし、長い目で見る観点も必要不可欠であるという余裕は持ち合わせないと、体が資本であることは間違いないのですから、一日の使い方というのは非常に大切なのだと思っています。
ただやはり、どちらかに寄りすぎた観点になりすぎると、得るものも得られず、何処かしら何かしらで大崩れしてしまう事があるのは確かな事実なのではないでしょうか…。

少しワンダーランド的な話しをするのであれば「時間は作られたもの」であるという事です。

本当は流れていない数字の羅列は、確認と共有を計るものであり、物差し的な役割を果たす意味はありますが、根本「時」というのは流れてはいないのです。
一分一秒、月日、年月、そんな積み重ねは、その人や誰かの一生分の数が1回として全て。
太陽が昇り沈むを繰り返し、地球や宇宙が回っているだけで、何かが進んでいるというのであれば、それは時間ではなく、人間や世の中が歩んでいっている「道」だけなのだと思います。
そしてそれが紛れもなく事実で、ワンダーランドではない現実世界が時代と文化なのです。
そう思えばほら、作られた時間の使い方なんて自由だとは思いませんか?

こと私が生きてきた世の中の、バブルが弾けた日本の社会や生活は、何処かしら何かに抑えられ、何かに追われているような時代になってしまったように思います。
飲食店のセカイで言えば、資本力や外資が大塔し、チェーン店というカテゴリーが増え、機械的機能で利便性を図れば「早い・安い・旨い」が食の時間の価値と、何より店と客の立場を変えた。
セルフ式という簡素化は、サービスとコミュニケーションの意味を履き違えだし、金銭を使わない決済も触れ合う事の重要性を忘れ出している。
それは外食産業の活用が、店や雇用としても、お客の使い方としても、世の中の流れとして利用にしか過ぎなくなってしまったからではないでしょうか。

ほらぁ昔はあったでしょ…
「もう今日は気にせず一杯飲んでいき~な~」や「ごめん、今日はツケといて~」のような、今で言う子供食堂的な善意と関係性。
「これ差し上げますので使って下さい!」や「これお貸ししますのでご活用下さい!」という業者間との関わりも、サンプルやリースでさえ損して得取る感覚で、お互いの価値を高め合い結び付いていたように思う。
待ち合わせや打ち合わせ、会議や談義でさえ、昔はコーヒーを傍らに過ごす場所で介すことが当たり前だった…。
何処かのタイミングで、人が誰かのタメではなく、自分や個のタメの比重にバランスを変えてしまった場面が増えてしまったように思います。

ここ数年で省かれてしまった飲食や外食という産業。
これはコロナ禍という現実を経て、全ての人が決して免れることの出来ない感覚を新たに生み出したとは思います。
そして物価や原料の高騰にあらゆる賃金の課題。これは、現状円安といった世界基準の問題にさえ直面する社会や経済の情勢の中でも受け止めて生活を共にしていかないといけない訳ですが、ピンチはチャンスという言葉もあるように、高い壁が今立ちはだかっているのであれば、その壁が何かを阻み防止しているだけではなく、昇り越えることや崩していく活力や勇気を与えるものと捉え、今改めて力を発揮する時期が来たのかもしれません。

ここ数年で感じた同じ空間や場所で共にする肌感や質感の重要性や心地好さ。
そして距離感という直接の触れ合いの中で生まれるあらゆる価値やあたたかみ。
離れる事で、奪われる事で感じる当たり前だったことの良さや幸せは、今人々の心に再認識されたのではないでしょうか?

きっと我々飲食業や外食産業の必要性は、生活の中でも切っても切り離せない価値や関係があったことと思います。
そして、作られた時間も大事という中で、誰かの句読点に喜びや満足に結びつく一時や場所はお腹だけではなく心も満たしていたはず。

 

さぁここから、そして今こそ存在価値と意義を高めていこう!
飲食の未来はきっと明るいぞ!!

編集部
奥野 薫平

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