kiss a kissa vol.01

喫茶とカフェ、はたまたマスターとバリスタのように、コーヒーの世界では何処かジャンル分けされた表現が広がっている。
同じ珈琲を主軸に置く店や立場として、実際それらはどのような役割を果たしているのかを、岡田さんとの対談から探ってみた。

Okaffe  Kyoto
岡田 章宏

呉服店を営む家業に産まれつつ、2004年に小川珈琲に入社後は、自らバリスタの道を切り開き、人材育成にも力を注いだ。独立後はそのカラーと共に躍進を止めない。

六曜社珈琲店
奥野 薫平

幼少期からコーヒーが身近な存在であったと共に、高校卒業後は前田珈琲で修行、独立、そして家業へと代を継ぎ、そこからは喫茶文化の継承とコーヒーの発展にも力を注ぐ。

コーヒー屋として
小川珈琲時代に数々の競技会に出場し、チャンピオンという輝かしい経歴もある岡田さんは、2016年に独立し「Okafe kyoto」をオープンされた。
そこは意外にも喫茶店跡をリニューアルした店舗で、その後はスウィーツやロースタリーなどの展開も見せている。
カフェやバリスタという印象を持っていた岡田さんに、そのジャンル分けについて伺うと「いや、僕も喫茶店が好きだから」と、志しやルーツは以外にも『古き良き時代』にある事が確認出来た。
実際Okafeがある場所は岡田さんの地元、また新たに展開したロースタリーも同級生が営んでいた材木店をリノベーションしたお店で、かなり地域を意識されている。
また、メニューも今までの繋がりを大切に、京都ブランドから考案したり、地域を大事にと近隣から食材を調達したりしている。

そもそも喫茶とカフェというジャンル分けは『訪れる人達』のカテゴリーの区別にしか過ぎないと私も思っている。

時代の流れから海外の文化や思考が入り込んで来て『バール』というものが根付き出してから、お酒を出す店も増えて、喫茶店からカフェーというジャンルが台頭し、近年ではセルフ式やスタンドという形と共に最先端を駆使するファッション的な感覚でお店が展開されている事も多い。
それは時代に準えるなら『ハイカラ』だった表現が言葉や形を変え今の時代にも繰り返され発展しているにしか過ぎず、店主の想いというのはコーヒーを介して『時間』や『空間』を作り出していくものとして岡田さんと共に意識確認ができ、またそのテーブルに置かれる一杯としては『こだわり』を持つべきではあるという共通認識を計ることが出来たと共に、私達はコーヒー屋さんであるという感覚なのである。
要するに、私達はコーヒーをメインにお客様とを繋ぎ、そのお客様に抱いてもらう満足に結び付ける術を、それぞれのカタチで持ち合わせているだけなのではないでしょうか。

その役割
それぞれのお店でお客様が過ごされる時間の中で、場所や空間と共にそのテーブルのヒトトキというのは実に自由である。
『どのように過ごすか』も付随してくるコーヒー屋のセカイは実に不確定要素も多い。
またお店の様々なスタイルやお客様の価値観も入り混じり、世代も関係ないそのハコの中を流れる雰囲気に彩りを添えることは実に難しいものでもある。

特にカウンターのあるお店、またカウンターに立つ司令塔の役割は実に重要なのである。

岡田さんは「失礼かもしれないけど、僕はお客様ではあるけれど、関係性は友達と位置付けている」といった旨の話しをしてくれた。
現に私は何処かお客様との関係性は商いをする上で大事な立場関係はあるものと思っていて、1つ1つのテーブルに目を向け、一席一席に寄り添うイメージで日々を過ごし、お客様の人生の中で考えればほんの一瞬かもしれない時間を預かっている感覚で少々重い︙(笑)

しかし岡田さんは、最終的には皆が笑顔になっているお店を意識していると言う。
その言葉を裏付けるように、店内には大きな窓から光が差し込み、お店の人もお客さんも笑顔で溢れていて実に明るい印象を受け元気をもらえる。
三者三様、十人十色、それは生きていく中でも様々に広がるものではあるけれど、それらを1つのお店でまとめ上げ、1つの場所で共有する中では、やはり店側の想いというものが、お客さんの心を惹き付けて魅力となり、また揺さぶるものであるというのが確かなのだと感じた。
やはりお店のカラーを用いるというのは特に重要な事なのだと思う。
そしてそのスタイルを、お客さんが日々何処かのタイミングで『行きたいな』と思ってもらえるような責任も兼ね揃えておかねばならないのだろう。

その一杯
少し話しを拡大して、この業界についてになるのですが、近年の競技会や展覧会というのは実にバラエティー豊かな内容が繰り広げられているのを御存知でしょうか?
また、バリスタやロースターといった、それぞれの作業工程を専門職として捉え、各々の知識や技術を磨いて職人のように携わる傾向が増えているようにも思います。
中にはマスターと位置付くような、個人店として全てをまかなう役割を担う人もいますが、生産者レベルでも、生産国の地域活性化や農園の農作物としての向上に加え、かなり特異性も兼ね揃えた生豆が増えてきた傾向もあります。

私は兼々、そのような様々な発展が消費者というお客様に戸惑いや複雑さを生じさせ、コーヒーが身近な感覚ではなくなるのではないかという懸念を持っていました。
すると岡田さんは「薫平ちゃん、だけど美味しいやん!」と一言。

経緯やプロセスといった方程式のようなものを用いる事も必要だと感じている僕には単純にハッとさせられた瞬間でした。
そして何よりも最終的にはお客様に届ける自身の回答なるものの提供が、コーヒーという液体に結びつき、その答えをお客様が美味しいと思ってもらえたら良いという実にシンプルなもので、私は少々複雑に考え過ぎていたのかもしれないことに気付かされました。
勿論、そこまでの過程や工程を浅はかにくみ取っている発言ではなく、プロとして自然にカップ一杯のコーヒーを『美味しい』ものに繋げる技術や経験が重要なだけであって、そこにお客様との答え合わせが生まれれば良いだけなのです。

ただ、補足するのであれば、専門職となりつつあるその1つ1つの作業、『焙煎↓抽出↓提供』という流れを全て一貫して行える能力を兼ね揃えた方が幅も深みを加わり、お店の継続という意味では大きな厚みと強みを持てることは確かだということを岡田さんと共感する事が出来たのは嬉しかったです。

二人の思うエンターテイメント
今回の対談で、岡田さんと改めて共通して捉えているモノコトがありました。
それはお店を舞台と表現し、演出しているという点です。
その役割は監督であり、演出家や演者でもあるのですが、少し視点が違うとすれば、岡田さんはカウンターの中を舞台とし、客席を観覧席のように招いて一堂を歓喜させる観点で、まさにエンターテイナーなのである。
私はというと、お店自体を舞台と考え、お客様と同じ立ち位置で、その時々に全ての人が主役になり得る可能性があり、また脇役にもなる総合演出として、その時を彩るアーティスト的な感覚でお店を営んでいると感じました。
そして、そうやって過ごすお店の中でのそれぞれの『おもてなし』はホスピタリティーではなくエンターテイメントから準えている点が、角度は違えど同じ舞台として立っている事が覗えてとても感慨深かったです。

今回の対談を通して、同業の皆様やお客様でも、様々なお店の沢山の演目から選択肢を持ってもらえたらと思うと共に、京都のコーヒー界や全国のコーヒー業界が、ますます面白くなっていくことを願うばかりでした。

編集部 奥野 薫平

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